『奇妙な果実』- 石垣章

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石垣章 (20代の頃)

この記事は2011年(平成23年)9月20日に「Ardent Obsession III」に投稿されたブログ記事を転載したものです。

『奇妙な果実』

おそらく1982年頃だと思われるが、土曜出版新社と呼ばれる出版社から『奇妙な果実』という緊縛写真集が出版されている。「土曜漫画創刊 25周年記念作品撮影」の写真集だ。

撮影担当は石垣章氏。緊縛は六本木薫氏。六本木氏は世田介一氏に近い、1970年代後半から80年代に活躍した緊縛師である。

この『奇妙な果実』の写真集、緊縛写真愛好者の間ではなかなかに評価の高い写真集である。発売当初も話題になったのであろうか、1983年(昭和58年)11月にはニューヨークのThe 4th Street Photo Galleryで石垣章氏は『奇妙な果実』の個展を開催している。東京三世社の『セクシーフォーカスScoop』1983年(昭和58年)11月増刊号には、「石垣章の奇妙な果実:アメリカに明日を見る超過激カメラマンの風景論」として意気込みが紹介されている。ただ、川本耕次氏のネットには、この展覧会が「女権保護団体に押し掛けられた」とあるので、大変な展覧会だったのかもしれない。

石垣章氏の緊縛写真集としては、他にも渡縛人氏が緊縛を担当したミリオン出版の『石原めぐみ写真集【夜叉姫】』(1987)が有名だ。その他にも、非緊縛系ヌード写真集、さらにはスターリンの遠藤ミチロウの写真集でも有名である。

1953年(昭和28年)頃生まれの石垣章氏、スタートはビニ本の写真家であった。アリス出版ビニ本撮影などで名が売れたらしく、『覗き撮り撮影現場』(アリス出版, 年代不記載)では、「自販機の雄、石垣章の撮影現場に乗り込んだ!!」と石垣章の撮影現場がドキュメント風に紹介されている。「先日『Oh! MANKO』と名打って自販機初の個展を企画したが、警察当局の力により公開されなかった。」とあるので、ニューヨークの展覧会といい、元気一杯の方だったのであろう。

1980年代前半はヌード写真家として多くの作品をいろいろな出版社から発表する。やがて1985年(昭和60年)に、にっかつ映画『緊縛花・美林の森』を監督し、動画分野にも進出する。この『緊縛花・美林の森』は石川均氏が脚本を担当し、初代葵マリー赤坂ブルーシャトー出身の女王様、春川かおりが緊縛指導をおこなっている。

このにっかつ映画の監督のあとも、90年代中頃まで、V&RKUKIアリスジャパンなどの数多くのAV作品を監督している。興味深いことに、90年代の中頃には、ゲームソフトの開発にも着手しており、講談社から「B線上のアリス」というソフトを販売している。

昨年の6月、あるルートから石垣章氏へのインタビューを申し込んだ。仲介者からは「石垣さんは現在病気で入院していまして、自分も直接話しができない状態です。」 というお返事をいただいた。病気の回復を待って、改めてお話しを伺うのを楽しみにしていた矢先、石垣章氏の訃報を知る。58歳。まだまだ活躍していただきたかったお年である。素晴らしい緊縛写真を残していただいたことに感謝し、ご冥福をお祈りいたします。

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