国辱映画を観る

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(この記事は2010-05-22にmixiに投稿した記事を加筆訂正したものです)


ピンク映画の起源というのは、1962年の小林悟「肉体の市場」か本木荘二郎「肉体の市場」とされているそうです。

花と蛇」の最初の映画が1965年のピンク映画として製作されているわけですが、この1960年代前半のピンク映画というのはなかなか目にすることができません。

タイトルにある「国辱映画」とは、若松孝二監督が1965年に製作した『壁の中の秘事』。若松監督は1963年デビューですから、デビュー2年後の作品で、すでにここまでに20本弱のピンク映画を製作しています。

『壁の中の秘事』がなぜ「国辱映画」と呼ばれるかについてはあちらこちらに書かれていますので、簡単に紹介します。

ピンク映画監督として注目を集め出した若松監督に、「関東ムービー」から何か作ってほしいとの依頼があります。映画会社だけが儲けを吸い取る状況にいらいらしていた若松氏は、確信犯的に2つのシナリオを準備します。1つはエロ満載のシナリオ。もう1つが映画となったシナリオ。

もちろん「関東ムービー」にはエロ満載のシナリオを見せて、270万円の製作費をもらい、それを元に隠しシナリオで撮ったのがこの作品。

できた作品を観て「関東ムービー」は「詐欺だ!」とかなりお怒りだったようです。

ここで話が終わってもよいのですが、さらにおもしろいお話が続きます。

ドイツから映画の買いつけで来日していたナントカさんが、たまたま『壁の中の秘事』の試写をみる機会を得ます。これはいける、ということで「関東ムービー」と契約を結び、海外に輸出されたピンク映画第一号となります(要確認)。お怒りの「関東ムービー」は一転してニコニコに。

ここで話が終わってもよいのですが、さらにおもしろいお話が続きます。

ベルリン国際映画祭という、今も続いている映画祭があるのですが、1965年の第14回映画際のコンペに山本薩夫の「にっぽん泥棒物語」(東映)と増村保造の「兵隊やくざ」(大映)が日本映画製作者連盟から推薦されますが、予選落ちしてしまいます。

映画祭側もなんとか伝統ある日本の映画をコンペに出したかったのでしょう。その時、ナントカさんが、これはよい作品だよと『壁の中の秘事』を入れてしまいます。「関東ムービー」も若松監督も、もちろん日本映画製作者連盟も知りません。

「関東ムービー」はますますニコニコですが、慌てたというか、怒ったのが日本映画製作者連盟。自分らの推薦した映画が予選落ちし、しかもなんと近頃出てきた怪しげなピンク映画が国際映画祭に日本代表として出るとは!!しかも調べたところでは監督の若松はチンピラあがりではないか!と大騒ぎになります。

外務省を巻き込んで、なんとか『壁の中の秘事』をベルリン国際映画祭への出品を阻止しようとしたそうですが、不成功に終わりコンペに出ます。

日本から審査員として出席した某評論家が「映画の出来も三流以下・・(他の審査員)もまったくいたたまれない気持ちで頭をかかえていた・・・・・会場は騒音のルツボと化して日本人として恥ずかしくて顔をあげられなかった。国辱映画だ。」とレポートしてきたとされています(「国辱映画」のキャッチが誰に由来するのか不明だそうですが)。

これで『壁の中の秘事』が金熊賞でも取っていたらストーリーとしては完璧だったんでしょうが、実際には映画際でも賛否両論だったようです。若松作品以外の他の作品も同じように賛否両論続出だったらしく、まあそういう時代だったのでしょう。この年の 金熊賞はゴダールの作品だったようです。

この「国辱映画」騒動のおかげで、その後の日本での上映も大入り満員になったそうで、「関東ムービー」は若松監督に足を向けては寝れなくなります。

以上が「国辱映画」という名前の由来。

ということで「ピンク映画らしからぬピンク映画」なんだろうな、と思って観ましたが、確かにピンク映画ではない。

ストーリーは、団地に住む予備校生、その姉、両親の4人家族と、その予備校生がのぞき見する別棟の元運動家夫婦と奥さんの愛人(これも運動家)の生活。個人的な事件が団地という得たいのしれないシステムに吸い取られていく、戦後高度成長期の不気味さみたいなものが描かれています。予備校生の姉は団鬼六氏お気に入りの「可能かづ子」です。

いかにも映画際に出るといった内容で、当時、エロ映画館にエロ映画を期待して観に来た観客の方が「いたたまれない気持ちで頭をかかえて」しまうのではないでしょうか。乳首が露出するシーンもほとんどなしで、前年の武智鉄二の「白日夢」の方がもっとたくさん乳首ポロポロ見えていました。

「映画の出来も三流以下」というのも嘘ですね。脚本もしっかりしており、音楽もレベルが高く、演技も問題なく、上質で立派な作品です。個人的には安部公房の作品を思い出させてくれ、好きですね。

ということで、60年代前半のピンク映画の雰囲気を知るという目的には適さない映画でしたが、一般映画としては思わず感動して観てしまった作品となりました。

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