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*[[内藤三津子]] | *[[内藤三津子]]は「代理人の天野と沼の文章を比べると、その文章、語学力、教養などからして、二人がまったく別人であることは歴然」「[[都市出版社]]から出たあたりで、沼=倉田は姿を消すことに決め、『'''ある夢想家の手帖から'''」の出版までは密かに関わったものの、その後は天野に沼名義の著作権も含めてすべてを譲ってしまったのではないか」と判断<ref name="#Naitou"></ref>。 | ||
*1981年(昭和56年)、[[森下高茂]]が「諸君」(文藝春秋社)で[[沼正三]]が東京高裁判事[[倉田卓次]]氏だとする説を主張。これを受けて[[天野哲夫]]が「自分は代理人ではなく、本人であると表明」し、一部に[[沼正三]]=[[天野哲夫]]説が定着<ref name="#Naitou"></ref>。 | *1981年(昭和56年)、[[森下高茂]]が「諸君」(文藝春秋社)で[[沼正三]]が東京高裁判事[[倉田卓次]]氏だとする説を主張。これを受けて[[天野哲夫]]が「自分は代理人ではなく、本人であると表明」し、一部に[[沼正三]]=[[天野哲夫]]説が定着<ref name="#Naitou"></ref>。 | ||
*[[内藤三津子]]の義兄の[[遠藤麟一朗]]の遺稿集に[[倉田卓次]]が寄稿。[[家畜人ヤプー]]の主人公の名前も「エンリン」<ref name="#Naitou"></ref>。 | *[[内藤三津子]]の義兄の[[遠藤麟一朗]]の遺稿集に[[倉田卓次]]が寄稿。[[家畜人ヤプー]]の主人公の名前も「エンリン」<ref name="#Naitou"></ref>。 | ||
*「[[沼正三|沼]]は森本([[森下高茂|森下]]) の住所を「[[奇譚クラブ]]』経由で知り、文通が始まったが、森本は極秘ながら沼の住所が長野県飯田市で、名前が[[倉田卓次|倉田貞二]]であることだけを知らされた」「その沼= | *「[[沼正三|沼]]は森本([[森下高茂|森下]]) の住所を「[[奇譚クラブ]]』経由で知り、文通が始まったが、森本は極秘ながら沼の住所が長野県飯田市で、名前が[[倉田卓次|倉田貞二]]であることだけを知らされた」「その沼=倉田が56年にいきなり森本の自宅を訪ねてきた。それは稀少本だった[[Alfred Kind|キント]]の原書『'''[[女天下]]'''』第四巻を見るためで、彼はそのドイツ語の原書を一晩で読破した」「森本は天野の「[[奇譚クラブ]]」におけるペンネームが[[黒田史朗]]であることも知っていた」「(森本は)沼が[[倉田卓次]]で、長野地家裁飯田支部判事補、札幌高裁判事、佐賀地家裁所長などを経て、東京高裁判事となっていることを突き止める。」(以上は「諸君!」1982年(昭和57年)『'''三島由紀夫が絶賛した戦後の一大奇書 「[[家畜人ヤプー]]」の覆面作家は東京高裁[[倉田卓次]]判事'''』の要約)に掲載された<ref name="#Naitou"></ref>。 | ||
*後半には[[天野哲夫]]かあるいは他の作家が何らかの形で関与していた可能性がある<ref name="#Naitou"></ref>。 | *後半には[[天野哲夫]]かあるいは他の作家が何らかの形で関与していた可能性がある<ref name="#Naitou"></ref>。 | ||
*[[濡木痴夢男]]、[[小田光雄]] | *[[濡木痴夢男]]、[[小田光雄]]<ref name="#Naitou"></ref>。などは[[奇譚クラブ]]投稿時の[[沼正三]]=[[倉田卓次]]としている。 | ||
*1970年(昭和45年)、[[風俗奇譚]]7月臨時増刊号に[[嵐山光三郎]]が『'''小説・[[沼正三]]'''』を書いている。 | *1970年(昭和45年)、[[風俗奇譚]]7月臨時増刊号に[[嵐山光三郎]]が『'''小説・[[沼正三]]'''』を書いている。 | ||
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*「平凡パンチ」1970年(昭和45年)2月23日号に「マゾヒスト、[[沼正三]]を探せ」 | *「平凡パンチ」1970年(昭和45年)2月23日号に「マゾヒスト、[[沼正三]]を探せ」 | ||
*[[濡木痴夢男]]氏が、『五十数年前、「いそがしいのはだれでも同じですよ。いそがしいなどと言わないで、『黄色オラミ誕生』の連載をおつづけなさい」と、私に忠告してくれたのは[[沼正三]]氏(巷間いわれている[[沼正三]]ではなく、本物の[[沼正三]]氏)でありました。」と書いている<ref>[http://pl-fs.kir.jp/nureki/sibai/126/index.htm 濡木痴夢男のおしゃべり芝居 第百二十六回]</ref>。 | *[[濡木痴夢男]]氏が、『五十数年前、「いそがしいのはだれでも同じですよ。いそがしいなどと言わないで、『黄色オラミ誕生』の連載をおつづけなさい」と、私に忠告してくれたのは[[沼正三]]氏(巷間いわれている[[沼正三]]ではなく、本物の[[沼正三]]氏)でありました。」と書いている<ref>[http://pl-fs.kir.jp/nureki/sibai/126/index.htm 濡木痴夢男のおしゃべり芝居 第百二十六回]</ref>。 | ||
*「[[沼正三]]の『手帖』は大正十五年に[[村山知義]]が訳出した事でも知られるフックス、キン卜の『'''[[女天下]]'''』に匹敵する古今東西マゾヒズム百科事典であり、その中で「[[SMという言葉の誕生|SMF]]」という言葉をすでに使用していたのが印象深い。」<ref>[[秋田昌美]]『'''アブノーマル雑誌の時代 ー日本のSM雑誌の夜明け ー'''』in H 1994年(平成6年)12月号</ref> | |||
==参考資料== | ==参考資料== |
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ぬま しょうぞう、19xx年(昭和xx年)
概要
文筆家。奇譚クラブ1953年(昭和28年)4月号からマゾの立場で執筆をしている。1956年(昭和31年)12月号から1958年(昭和33年)4月号まで連載された『家畜人ヤプー』は三島由紀夫を始め、渋沢龍彦、寺山修司らの評価を受け、奇譚クラブにユニークな評価を与える一要因となった。
歴史
1922年(大正11年)1月20日、倉田卓次が東京に生まれる。
1926年(昭和元年)3月19日、天野哲夫が福岡市に生まれる。
1953年(昭和28年)、奇譚クラブ4月号, p23に『ネクタール 神の酒を手に入れる方法』。
1956年(昭和31年)、奇譚クラブ1956年(昭和31年)12月号 p124から「家畜人ヤプー」連載開始。
1959年(昭和34年)、奇譚クラブ1959年(昭和34年)6月号、p80。「家畜人ヤプー」第21回第28章で中断。
1959年(昭和34年)、奇譚クラブ1959年(昭和34年)9月号、p116に「家畜人ヤプー」「中絶お詫びのご挨拶」。
1982年(昭和57年)、「諸君」(文藝春秋社)11月号に森下小太郎『三島由紀夫が絶賛した戦後の一大奇書 「家畜人ヤプー」の覆面作家は東京高裁倉田卓次判事』。
1982年(昭和57年)、「諸君」(文藝春秋社)12月号に森下小太郎『倉田卓次判事への公開質問状』。
1983年(昭和58年)、倉田卓次が退官。その後、『裁判官の書斎』(勁草書房)などのを精力的に執筆[1]。
1988年(昭和63年)2月、S&Mスナイパー2月号から沼正三『続・家畜人ヤプー』の連載開始。
2008年(平成20年)11月30日、天野哲夫永眠。
2011年(平成23年)1月30日、倉田卓次永眠。
代表作
- 沼正三『ネクタール 神の酒を手に入れる方法』奇譚クラブ1953年(昭和28年)4月号, p23
- ソフィア伯爵夫人・著、沼正三・訳『足舐め小説 マゾヒストの會』奇譚クラブ1953年(昭和28年)5月号, p16
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から』奇譚クラブ1953年(昭和28年)6月号, p68より連載開始。
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から(三)』奇譚クラブ1953年(昭和28年)8月号, p70
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から(四)』奇譚クラブ1953年(昭和28年)9月号, p92
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から(五)』奇譚クラブ1953年(昭和28年)10月号, p174
- 沼正三『再びスラックスについて~吾妻新氏に答える~』奇譚クラブ1953年(昭和28年)10月号, p70
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から』奇譚クラブ1953年(昭和28年)11月号, p160
- 沼正三『吾妻新氏に最終的に答える』奇譚クラブ1953年(昭和28年)12月号, p186
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から』奇譚クラブ1953年(昭和28年)12月号, p200
- 沼正三『スカタロジーという語について-高橋鉄氏に問うー』1954年(昭和29年)4月号, p210
- 沼正三『あるマゾヒストの手帖から』奇譚クラブ1954年(昭和29年)7月号, p105
- ザッヘル・マゾッホ・作、沼正三・解説『黒女皇』奇譚クラブ1956年(昭和31年)10月号, p138
- 沼正三『家畜人ヤプー』奇譚クラブ1956年(昭和31年)12月号, p124 第1回目〜1958年(昭和33年)4月号, p52 第二十三章
- 沼正三『ある夢想家の手帖から』奇譚クラブ1961年(昭和36年)1月号, p156
- 沼正三『家畜人ヤプー』(都市出版社, 1970) 絵:加納光於、解説:奥野健男、金井美恵子
- 沼正三『ある夢想家の手帖から』(都市出版社, 1971)[注 1]
- 2010年(平成22年)9月1日-6日、月蝕歌劇団『沼正三/家畜人ヤプー』(企画:康芳夫、脚本・演出:高取英、音楽:J・A・シィザー)
沼正三の正体
- 康芳夫、濡木痴夢男が事実をかなり正確に把握している筈である。
- 内藤三津子は「代理人の天野と沼の文章を比べると、その文章、語学力、教養などからして、二人がまったく別人であることは歴然」「都市出版社から出たあたりで、沼=倉田は姿を消すことに決め、『ある夢想家の手帖から」の出版までは密かに関わったものの、その後は天野に沼名義の著作権も含めてすべてを譲ってしまったのではないか」と判断[1]。
- 1981年(昭和56年)、森下高茂が「諸君」(文藝春秋社)で沼正三が東京高裁判事倉田卓次氏だとする説を主張。これを受けて天野哲夫が「自分は代理人ではなく、本人であると表明」し、一部に沼正三=天野哲夫説が定着[1]。
- 内藤三津子の義兄の遠藤麟一朗の遺稿集に倉田卓次が寄稿。家畜人ヤプーの主人公の名前も「エンリン」[1]。
- 「沼は森本(森下) の住所を「奇譚クラブ』経由で知り、文通が始まったが、森本は極秘ながら沼の住所が長野県飯田市で、名前が倉田貞二であることだけを知らされた」「その沼=倉田が56年にいきなり森本の自宅を訪ねてきた。それは稀少本だったキントの原書『女天下』第四巻を見るためで、彼はそのドイツ語の原書を一晩で読破した」「森本は天野の「奇譚クラブ」におけるペンネームが黒田史朗であることも知っていた」「(森本は)沼が倉田卓次で、長野地家裁飯田支部判事補、札幌高裁判事、佐賀地家裁所長などを経て、東京高裁判事となっていることを突き止める。」(以上は「諸君!」1982年(昭和57年)『三島由紀夫が絶賛した戦後の一大奇書 「家畜人ヤプー」の覆面作家は東京高裁倉田卓次判事』の要約)に掲載された[1]。
- 後半には天野哲夫かあるいは他の作家が何らかの形で関与していた可能性がある[1]。
- 濡木痴夢男、小田光雄[1]。などは奇譚クラブ投稿時の沼正三=倉田卓次としている。
- 1970年(昭和45年)、風俗奇譚7月臨時増刊号に嵐山光三郎が『小説・沼正三』を書いている。
エピソード
- 奇譚クラブ1970年(昭和45年)5月号に「『家畜人ヤプー』公刊さる」。2月10日に都市出版社から。
- 三島由紀夫は『家畜人ヤプー』を世に出したくて、中央公論社に持ちこんだりしていたといわれている[1]。
- 須磨利之が三島由紀夫と天野哲夫を引き合わせたらしい[1]。
- 「平凡パンチ」1970年(昭和45年)2月23日号に「マゾヒスト、沼正三を探せ」
- 濡木痴夢男氏が、『五十数年前、「いそがしいのはだれでも同じですよ。いそがしいなどと言わないで、『黄色オラミ誕生』の連載をおつづけなさい」と、私に忠告してくれたのは沼正三氏(巷間いわれている沼正三ではなく、本物の沼正三氏)でありました。」と書いている[2]。
- 「沼正三の『手帖』は大正十五年に村山知義が訳出した事でも知られるフックス、キン卜の『女天下』に匹敵する古今東西マゾヒズム百科事典であり、その中で「SMF」という言葉をすでに使用していたのが印象深い。」[3]
参考資料
注釈
お役たちweb
鈴木真吾『沼正三と天野哲夫 ある覆面作家の素顔をめぐって 』(和光大学現代人間学部紀要 第3号(2010年3月発行))