捕縄術
ほじょうじゅつ、とりなわじゅつ
概要
戦国時代に戦術として発達したが、江戸時代に入り、犯罪者の捕縛拘禁法として大成された縄を用いた武術、逮捕術。ただし、江戸以外にも各藩がそれぞれの流派をかかえ、独自の法体系を確立していた[1]江戸時代には同心の必須武術であり、明治期の警視庁に継承されていた[2]。昭和SMの緊縛に少なからぬ影響を与えている。
別名
取縄術、捕縛術、縲繋之術、枷術[3]
早縄と本縄
早縄
速縄、仮縄、仮縛、捕手縄とも呼ばれ[3]、容疑者をとりあえず確保する場合にかける縄。
本縄
本式縄、護送縄、堅縄とも呼ばれ[3]、すでに捕らえた容疑者を押送する場合にかける縄。
流派
江戸時代には流派は150以上、縛り方とその名称は300種以上あったと言われている。
主な流派
- 一達流
- 方圓流
- 制剛流、梶原流
- 猪谷流
- 武衛流
- 理極流
- 心極流、荒木流、清心流
- 常慎流、夢想流
- 難波一甫流
- 東流
- 一傳流
- 須田流
- 佐々木流、大学流、地間戸流、一乗不二流
- 劍徳流、大正流
- 新影治源流
- 新影新抜流
- 笹井流
流派あ行
東流、 荒木流、 荒木流拳法、 猪谷流、 石黒流、 一條流、 一角流 一乗不二流 一達流、 一傳流、 円空流、
流派か行
流派さ行
笹井流、 佐々木流、 四条流 常慎流、 心極流、 新影治源流、 新影新抜流、 清心流、 須田流、 制剛流、 関口新心流、
流派た行
大正流、 大学流、 高須流、 竹内流、 地間戸流、 同心吉田家伝縄手本、
流派な行
流派は行
流派ま行
水野流、 武衛流、 夢想流、
流派や行
八重垣流、
流派ら行
流派未整理
諸賞龍、 縄之伝極意、
関口流柔術、 梶原流、
浅山一伝流、
夢相流、
一乗不三流、
跡見榛流、
安藤流、
池田流、
一刀流、
今川流、
無辺要眼流、
円流、
御家流、
小野流、
海道流、
梶原流、
香取流、
上柄流、
眼心流、
無人斉流、
扱心流、
気楽流、
楠流、
日下流、
日下真流、
日下新流、
日下夢想流、
原海流、
謙信流、
剣流、
講神館流、
無双一身流、
榊山流、
三抜謙信流、
力信流、
養心坪井流、
無究玉心流、
養心流、
武蔵三徳柳生流、
揚心流、
無双流、
山本無辺流、
無雙流、
無佳又神鳥流、
山田新心流、
山田流、
無相流、
森流、
夢想流、
至心流、
師心流、
志真古流、
四心古流、
紫山流、
諸賞流、
沙門流、
神流、
新海流、
心外無敵流、
新心流、
心照流、
新撰流、
神道無想流、
真之神道流、
新無双流、
水野流、
水鳥流、
本覺克己流、
武尊流、
宝山流、
南蛮流、
日流、
日新流、
長谷川流、
八幡新当流、
原流、
日域無雙一学流、
平松天流、
福嶋流、
藤原流、
不変流、
佛體流、
随変流、
鈴木流、
長岡兼流
富澤流、
戸田流、
天神真揚流、
偉心流、
天流、
関口新心流、
禅家一流、
禅家明侍流、
大征流、
高尚流、
瀧本流、
宅間営流、
竹之節流、
直指流、
直至五侍流、
真陰流柔術、
石黒流
武術の歴史
1773年(安永2年)、『鏡新明智流』の道場が日本橋に「士学館」として開館。戸田流、一刀流、柳生流、堀内流の影響。
1822年(文政5年)、『北辰一刀流』の道場が日本橋に「玄武館」として開館。
1826年(文政9年)、『神道無念流』の道場が道場を開館。
資料
博物館
- 明治大学博物館の刑事部門の江戸時代の捕縄術や江戸時代の責めの資料が展示されている。
- 明治大学博物館のHPでは、1893年(明治26年)に刊行された藤田新太郎『徳川幕府刑事図譜』がデジタル一般公開されている。江戸時代の捕縄術や江戸時代の責めを伺い知ることができる。
- 国会図書館が公開している藤田新太郎『徳川幕府刑事図譜』。
- 小田原市図書館の藤田西湖文庫には多くの捕縄術関連資料がある。
書籍
- 井口松之助『拳法教範図解 : 早縄活法』(魁真楼, 1898)
- 井口松之助『柔術練習図解 : 早縄活法 一名・警視拳法』(岡島屋, 1899)
- 井口松之助『兵法要務武道図解秘訣』(井ノ口松之助, 1890)
- 岡村書店編輯部『大日本武道練修教範』(岡村盛花堂書店, 1918)
- 清武玄『捕縄術講話』(松華堂書店, 1933)
- 名和弓雄『拷問刑罰史』(雄山閣出版, 1963)
- 板津安彦『与力・同心・十手捕縄』(三秀舎, 1992)
- 名和弓雄『十手・捕縄事典―江戸町奉行所の装備と逮捕術』(雄山閣出版, 1996)
- 三田村鳶魚(朝倉治彦篇)『鳶魚江戸文庫1捕り物の話』(中央公論社, 1996)
- 藤田西湖『図解捕縄術』(名著刊行会, 2000)
- 水越ひろ『詳解捕縄術』(愛隆堂, 2000)
- 水越ひろ『写真で覚える捕縄術―手にとるようにわかる完成手順』(愛隆堂, 2005)
- 板津和彦『一達流捕縄術』(板津和彦, 2011)
雑誌
- 嶽収一『捕縄術入門』奇譚クラブ1957年(昭和32年)10月号, p138
- 嶽収一『捕縄雑考』奇譚クラブ1953年(昭和28年)5月号, p34
- 『女性刑罰史絵巻』画報風俗奇譚1961年(昭和36年)2月号, p51
引用文献
注釈
縛り方の名称
名称のつけ方
縛りの名称のつけ方は、「縛りの目的を表す」つけ方、「縛りの型を表す」つけ方、「」などがある。
あ
- 悪僧縄
- 足固縄:船中に、また剛力者にも用いる
- 違菱縄:雑人に掛ける縄
- 笈摺縄(おいずりなわ):山伏に掛ける縄
- 女縄
か
- 返し縄:出家に掛ける縄
- 上縄:雑人に掛ける縄
- 切縄:首を斬る時に用いる縄
- 軽卒草總角 (方円流)
- 下廻縄(げかいなわ):剛力者に掛ける縄
- 五筒縄
さ
- 先三形仕込 (方円流)
- 注連縄(しめなわ):社人に掛ける縄
- 社人縄
- 十文字縄:雑人に掛ける縄
- 將眞總角 (方円流)
- 早陰十文字 (方円流)
- 早陰菱 (方円流)
- 早陽十文字 (方円流)
- 早陽菱 (方円流)
た
- 鷹の羽返し縄:出家に掛ける縄
- 介縄(たすけなわ):囚人の受渡し追放放免に用いる
- 乳掛縄(ちかけなわ):婦女に掛ける縄
- 土行總角 (方円流)
- 留り縄(とまりなわ):縄抜けの巧みな者に掛ける縄
な
- 長袖鱗形 (方円流)
は
- 早猿結 (方円流)
- 早蜘蛛糸 (方円流)
- 早蟹縅 (方円流)
- 羽付縄:対決等の場合、小手を留めない
- 引渡鎖掛 (方円流)
- 二重菱縄:士分の者に掛ける縄
- 本陽十文字 (方円流)
- 本陽十文字陰 (方円流)
- 本陰菱 (方円流)
- 本陽菱 (方円流)
ま
- 女五六 (方円流)
- 無番縄
わ
- 割菱縄:雑人・旅押国渡に用う
真・行・草
- 捕縄術の名称に含まれる「真」「行」「草」は、書道の筆法である「楷書(真)・行書・草書」という 三種の筆法に関連しているという指摘がある[1]。「真」=本来の形。正格。「草」崩した風雅の体。「行」=その中間を意味し、華道・茶道・庭園・俳諧・絵画の分野でも流用。
引用文献
注釈
お役たちweb
つながり
つながり
江戸時代 捕縄術 江戸時代の責め 伝統芸能の中の責め 歌川国芳 勝川春章 歌川國貞 月岡芳年 落合芳幾 明治大学博物館 發花杖 江戸三座 中将姫の雪責め 明烏夢泡雪 魁駒松梅桜曙微 白木屋お熊 澤村田之助 草双紙